大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

鳥取地方裁判所 昭和42年(む)26号 決定 1967年3月07日

主文

鳥取地方検察庁検察官検事佐々木信幸が昭和四二年三月二日付でなした別紙第一記載の接見等に関する指定はこれを取消す。

理由

一  本件申立の要旨

別紙第二記載のとおりである。

二  当裁判所の要旨

事実調の結果によれば、被疑者は右被疑事件について昭和四二年二月二一日逮捕にひき続き郡家警察署(代用監嶽)に勾留せられ、以来身柄を拘束され且つ、刑事訴訟法第八一条により接見等を禁止されていること、鳥取地方検察庁検察官は昭和四二年三月二日付で別紙第一記載のような指定をなしたことが認められる。

ところで刑事訴訟法第三九条三項による接見の指定をなすに当り本件指定にみられるようないわゆる一般的指定書を発し、別に発する具体的指定書を持参するものに限つてその範囲内で接見交通を許可するという方法がとられていることは周知のところである。この場合、右一般的指定なるものだけでは具体的な指定の内容がなくいまだ法第三九条三項による指定をなしたものとはいえず、従つて、被疑者と弁護人又は弁護人となろうとするものとの接見交通権は何等制限されることはないとの解釈も成り立ち得るところであつて、かかる場合には右一般的指定なるものだけでは不服申立の対象とはならないしまたこれを取消す利益もないとも考えられないではない。この見解に立つ限り一般的指定の取消を求める申立を棄却する外はない。しかし、右一般的指定がなされると、実際上、具体的指定がない限り、弁護人は被疑者との接見交通を一般的に禁止され、具体的指定によつて右一般禁止を解かれてその範囲内で接見交通をなし得るに至るというように運用されているのが実情である。もつとも右実情に着目しつつも、一般的指定そのものだけにとどまらずこれと具体的な接見日時等の指定の拒否または引延しとを併せてこれら一体をもつて接見禁止ないし拒否処分があつたものとみてこれを不服申立の対象とみる考え方もあり得よう。しかしながら、むしろ、具体的指定のない限り一般的に接見交通が禁止されている点に鑑みれば一般的指定自体が法第三九条三項の指定権にもとづいて発せられた処分ということができるのであつて、具体的指定の拒否または引延しをまつまでもなく、一般的指定自体を不服申立の対象とすることができないわけではない。

つぎにこのような一般的指定によつて弁護人と被疑者との交通権を一般的に禁止することは、法第八一条、第三九条の趣旨に徴し許されないものと解する。むしろ、具体的指定による内容が被疑者の防禦準備の途を制限することになるような場合に比し、かかる一般的指定による方が被疑者の防禦準備の途を封ずることとなつて(もつとも具体的指定によつてこれが解除されることになる場合もあろうが、そのことは別として)、その救済の必要の度合もより一層強いものといわなければならない。

以上の理由によつて本件における指定はこれを違法として取消すべきものであり、法第四三〇条に従い主文のとおり決定する。(中村捷三)

別紙第一

捜査のため必要があるので、右の者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見又は書類若しくは物の授受に関し、その日時、場所及び時間を別に発すべき指定書のとおり指定する。

別紙第二<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例